村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス』に出てくる辻堂のハングリータイガーを求めて
村上春樹ファン歴19年で、人生の半分以上を彼の小説と共にしてきました。
村上さんの小説に登場する音楽や本について、その後を追いかけるように聴いたり読んだりしてきたのですが、今回は小説に出てくるお店に実際に行ってみようと思い立ちました。
そして、村上さんの6番目の長編小説『ダンス・ダンス・ダンス』に出てくる「ハングリータイガー」を求めて、神奈川県藤沢市の辻堂へ行ってきました。
辻堂の海沿いのハングリータイガーを求めて
『ダンス・ダンス・ダンス』は、村上春樹さんが1988年10月に出版した長編小説です。村上作品の中でもポップで読みやすく、作者自身も「ファースト村上春樹作品」としてすすめています。
一応ちょこっと『ダンス・ダンス・ダンス』のあらすじを補足しますと
主人公の「僕」は34歳。世界とのつながりを失った僕は、ダンスのステップを踏むように現実を生きることで、再び不思議なつながりを回復していく
というおはなしです。
『ダンス・ダンス・ダンス』で僕とユキが訪れたハングリータイガー
「僕」が新たに獲得したつながりのうちの一人が、ユキという13歳の美少女です。『ダンス・ダンス・ダンス』の中で僕とユキは辻堂の海沿いのハングリータイガーを訪れます。
辻堂の海沿いのハングリータイガーというヒントから、そのお店は「ハングリータイガー茅ヶ崎海岸店」だと思われます。
住所は神奈川県茅ヶ崎市中海岸3-11-11
「ハングリータイガー」は神奈川県を中心に出店している、ハンバーグが人気のお店です。
「茅ヶ崎海岸店」は、ハングリータイガーが1980年代に怒涛の出店ラッシュを迎えた時に出店したお店の一つになります。
『ダンス・ダンス・ダンス』の舞台設定は1983年なので、「僕」とユキの二人は出来たばかりのお店に足を運んだのですね。
跡地には「ステーキガストサザンビーチちがさき店」が
しかし今は「茅ヶ崎海岸店」はもうありません。2000年にハングリータイガーの店舗で発生したO-157によって、それまで33店舗あったお店は3店舗にまで縮小。「茅ヶ崎海岸店」は閉店してしまいました。
現在「茅ヶ崎海岸店」の跡地には、肉つながりで(?)「ステーキガストサザンビーチちがさき店」が出店しています。
つまり『ダンス・ダンス・ダンス』の中で僕とユキが訪れた店舗にはもう行くことができません。
なんということでしょう・・・計画が早々と暗礁に乗り上げてしまいました。
2017年にオープンした湘南辻堂店
残念ながら「茅ヶ崎海岸店」は閉店してしまいましたが、2017年1月に湘南エリアに再びハングリータイガーがニューオープン。
その名も「湘南辻堂店」。小説の中で二人が訪れた店舗ではないけれど、辻堂のハングリータイガーという点は一緒だよね!ということで、行って参りました。
湘南新宿ラインで行く文学の旅
実は今回の旅の目的は、辻堂のハングリータイガーだけではありません。湘南新宿ラインと東海道線を利用して、村上春樹と川上弘美に関連のある場所を巡ります。旅程はこんな感じです☟
1日目昼:村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス』に出てくる辻堂のハングリータイガーへ
1日目夕方:川上弘美『真鶴』の舞台となった神奈川県の真鶴半島へ
2日目昼:村上春樹の邸宅がある大磯へ
活字中毒の私が、特に偏愛する作家にゆかりのある土地を旅しました。つきあってくれた家族には感謝です。
初めての湘南新宿ライングリーン車
グリーン車に乗るのは初めてなので、ネットで情報を収集。券売機でsuicaにグリーン券情報を登録して、ホームへ向かいます。
座席の天井部分にある「グリーン券情報読み取り部分」にタッチして、赤から緑に変わると、読み取りが完了したというしるしになります。
最初は空いていましたが、本庄駅を過ぎたあたりで乗車率は80%ほどになりました。
辻堂駅からハングリータイガーを目指す
JR辻堂駅からハングリータイガー湘南辻堂店までは、北口を出て県道307号に沿って東にまっすぐに進んでいきます。一本道なのでわかりやすく、距離も1㎞ほどなので徒歩で行くことができました。
我々が辻堂駅に到着したのがAM11:04。ハングリータイガー湘南辻堂店のオープンはAM11:00。
ハングリータイガーは、食事時になると30分、1時間待ちは当たり前という人気店なので、足早にお店へ向かいます。
お店までの途中、自転車の後ろに子供を乗せたお父さん・お母さんとたくさんすれ違いました。
辻堂駅からハングリータイガーへの道すがら、「湘南クッキー」という看板が。何これ!?
中には自動販売機がずらりと並んでいましたが、全てお菓子の無人販売機でした。
100円から購入できるさまざまなお菓子が並んでいましたが、なんだか圧倒されてしまって買えませんでした。買えばよかった。
県道307号線沿いに10分程歩くと、左手にハングリータイガーの看板が見えてきました。
ハングリータイガー湘南辻堂店で昼食を
大きな窓ガラスがぴかぴかと光っていて、とてもおしゃれな建物です。天井も高い。
我々がお店に到着したのは11時20分頃でしたが、すぐに席に通されました。自分の趣味に家族を付き合わせているので、待たずにすんでほっとしました。
僕とユキがハングリータイガーで食べたメニュー
小説の中で、「僕」はステーキとアルコール抜きのビールとコーヒーを注文しています。
ユキが食べたデザートのプディングは、残念ながらメニューになかったです。
ハングリータイガーは、チャコールブロイラーと呼ばれる炭焼き台で焼かれた、つなぎなしの肉100%のハンバーグが人気です。
「僕」が食べたステーキ(お肉の種類は分からないけれど)も、伝統のハンバーグもどっちも食べてみたい!ということで我々の注文はこのようになりました☟
私:ダブルハンバーグステーキ(ハンバーグが2個)
夫:国産フィレステーキ150g
子供:お子様おとりわけセット
お子様おとりわけセットとは、大人が頼んだメインのお料理をシェアするためのセットです。セット内容は以下の通り。
お子様コーンスープ
お子様ポテト
パンor小ライス
ドリンクorゼリー
『ダンス・ダンス・ダンス』に思いを馳せながら実食
息子のおとりわけセットが真っ先にきました。子供はなかなか待つことができないので、ありがたいです。
ハングリータイガー湘南辻堂店には、順番待ちの子供が退屈しないようにとキッズの遊び場も設置されています。子供にも優しいお店です。
お子さまはおいしいポテトに大満足。
お子さまにも、大人と同じサイズのパンが運ばれてきました。パンだけでお腹いっぱいになりそう。
夫が注文したサラダとスープ。サラダのドレッシングは、マスタードとサウザンアイランドから選べました。押し麦のスープはカレーのようにスパイシー。
20分程して熱々のハンバーグが到着。2個だったハンバーグが店員さんのナイフさばきにより半分に切り分けられて、4個になりました。
ソースも店員さんが目の前でかけてくれます。このソースがパンに合う!オニオンと醤油の味がしたけれど他に何が入っているのだろう。
夫の注文したフィレステーキがあまりにおいしかったので、ハンバーグと半分交換しました。
『ダンス・ダンス・ダンス』では、辻堂にある離婚したユキの父親の家を「僕」とユキが訪れます。父親の家を辞した後、車に乗り込むなり「僕」に「おなかがすいた」と言うユキ。父親に「飯でも食べていくか」と訊かれても「おなかがすいていない」と拒絶したのに。
ユキは「僕」に対して父性、いやむしろ思い切りわがままを言える母性を見出しているのだろうな、と思いを馳せていたらいつの間にか完食です。ごちそうさまでした。
我々がお店を出るPM0:30頃には、順番は30分待ちとなっていました。
ハングリータイガー湘南辻堂店訪問後記
両親が離婚し、高名なカメラマンの母に放っておかれているユキは、普段はホカホカ弁当とかマックとかケンタッキーとかデイリークイーンを食べています。
そんなユキに「まともなもの」を食べさせようと思っている「僕」が連れて行ったお店が、ハングリータイガー。
きっとこのお肉がユキの心と体の栄養になったのだなと、噛みしめながらいただきました。
このあと我々山本家一行は、川上弘美『真鶴』の舞台となった真鶴半島を目指します。