胎内以前記憶?読むと子供に優しくできる育児書『母脳 母と子のための脳科学』黒川伊保子
子供に対して全然優しくなれない時、積極的に育児書を読むようにしています。
『母脳』の著者黒川伊保子さんは、「ほんまでっか!?TV」などにも出演される脳の研究者です。
黒川さんが最愛の息子さんを育てるまなざし、黒川さん自身が子どものころ親との関わりで感じたことを通して、子供の脳の成長について情熱的に書かれた本が『母脳』です。
お腹の中にいる前はここにいたよという優しいものがたり
『母脳』は夫婦で熟読したのですが、「胎内記憶」のエピソードを読んで、二人ともこどもが愛しいという気持ちをより強く持つことができました。
よく2歳くらいまでは、母親のお腹の中にいたころの記憶があると聞きますが、脳のメカニズムからみてもその可能性は高いそうです。
本書では、胎内以前記憶とでもいうような、「お母さんのお腹の中に宿る前にあなたはどこにいましたか?」という記憶についてのエピソードが語られています。
このお母さんのお腹の中にいる前の記憶についての箇所は、個人的には本書のハイライトです。読むとぶわっと鳥肌が立つような感覚に襲われます。
人がどこからきてどこへゆくのかということは、いまだ証明されていません。子供が持つお腹の中に宿る前の記憶が、科学的に正しいのかはわかりません。
でも「科学的根拠」のない「ものがたり」だとしても、なんと優しい物語だろうと思いました。自分を選んで生まれてきてくれたという物語は、子どもに対して優しい気持ちにさせてくれました。
3歳前に言ってしまったひどい言葉は忘れてしまう
子どもが生まれて時間の余裕も、気持ちの余裕も、身体的な余裕もない。部屋も散らかっている。ごはんも適当。仕事もぱっとしない。よそのお母さんが立派に見える。子供に怒ってばかり。早期教育をしなきゃいけないのかと焦る。
そういった焦りや不安についても、『母脳』には脳科学の観点からみて、大丈夫だよと言ってくれるような答えが用意されています。以下は一部となりますが、個人的に特に気持ちが軽くなった部分です。
- 部屋におもちゃが散らかっていても叱ることはない。その方が子どもの脳の発達には良い。
- 脳は何かを得たら何かを捨てる。早期教育で英語を習わせると、理系脳にはならない。
- 子供の脳の記憶の文脈は3歳でいったんリセットされる。乳児期に言った「産もうか迷った」などの言葉は、忘れてしまう。
でも、タンパク質豊富な「朝ごはん」を食べることは、脳の発達にとても大切なのでそこは気を抜いてはいけないらしいです。
手を抜くところと手をかけるポイントを、自分なりに見極めることできるのが、この『母脳』の魅力でもあります。
理論と感情がきちんと同居するとても読みやすい本
『母脳』は、たいへん読みやすいです。研究者の黒川さんが語るきちんとした理屈と、母としての黒川さんの感情が爆発する本です。納得しながらすいすいと読み進めることができます。
- 息子を持つおかあさん
- よその子育てが気になってしまう御両親
- 濃くてパワフルな黒川さんの「語り」を味わいたい方
今年も残すところ約2か月となりましたが、2018年読んだ中で個人的に一番ためになる育児書が『母脳』になるでしょう。