なんとも情けない交際の始まり!安壊の関係夫婦の告白
マ神からの好意を感じつつも、きっと自分に告白する気などないんだろうなと悟ったふ美子。
しかし、一度諦めたものほど期せずして自分の手の内に飛び込んでくるものなのでしょうか。
登場人物
妻:ふ美子(ふみこ)
安壊の関係において、「安」にあたる。人の顔色を伺って生きてきた女。
夫:マ神(ましん)
安壊の関係において、「壊」にあたる。良くも悪くも、誰に対しても態度の変わらない正直な男。
やまだごろう
おしゃべりなゼミの仲間。意図せずして、マ神とふ美子の仲を取り持つ。
マ神の想いを友人から告げられるふ美子
「マ神は自分に告白する気がないんだろう」と諦めたふ美子。ある日、同じゼミの友人からふ美子はリークを受けました。
ふ美子も、マ神の気持ちに薄々勘付いてはいましたが、改めて言葉で聞かされるとそれなりの衝撃はありました。
しかし、ごろうさんからマ神の気持ちを伝えられても、ふ美子は自分から何のアクションも起こしませんでした。
明らかにいつもと様子が違うマ神
卒論の資料を集めに、国会図書館へ出かけたふ美子とマ神は、その帰りにファミレスへ寄りました。
その日のマ神はいつもとどこか違ってました。「俺、今まで自分の人生のピークは過ぎたと思ってたんだけど・・・人生いいことあるんだなーって思った」と口走り、明らかに浮足立っているのです。
ふ美子は「そりゃあよかったねー」と曖昧な笑顔で答えました。
こんなこと言い出すなんて、マ神は告白するんじゃないの?。
ふ美子に緊張が走ります。この時のふ美子の正直な気持ちは、「あー、告白されないという読みが外れたか」でした。うれしいけれど、これからのことを思うと気が重かったです。
モテる友人たちは揃って、告白されるまでの駆け引きが楽しいんじゃんと言います。
ふ美子は、駆け引きが楽しいと思ったことなど一度もありません。これがモテない所以の一つかもしれません。
でも、付き合うと楽しいだけじゃ済まされなくなるというのは、モテないふ美子にもわかります。だからある種の人たちは、責任を負わない楽しみを長引かせようとするんだろなと、ぼんやりと思いました。
告白をアシストするごろうさんからのメール
妙な雰囲気のままファミレスを出て、突然駐輪場で立ち止まるマ神。誰かからメールが来たようで、コートのポケットに手を突っ込んで、携帯電話を取り出しました。
メールを確認したマ神は、携帯電話の画面をふ美子に向けました。ごろうさんからのメールでした。
そこには「ふ美子に告白するんだろう?頑張って」というメッセージが書かれていました。
ファミレスの駐輪場で睨み合いが続く
ごろうさんのメールを読んでから、二人の間で沈黙が20秒ほど続きました。
言い出したら負けという両者の睨み合いが続いていたように感じました。
観念したマ神は、「もし付き合ってくれるとしたら付き合ってくれることになるのだけど、付き合ってくれるということでよいでしょうか?」と回りくどい告白をしました。
(これ、告白されるかもという構えがなければ、何言ってんのか一度じゃ聞き取れないよ。)
ふ美子の答えは「ああ、うん、いいよ」でした。
なんとも情けない交際の始まりでした。ふ美子はいまだに、もっと気の利いた返事ができたらよかったと後悔しています。マ神の告白だって、結構酷いものだったと思っています。
こんなものは全然、安壊の関係の周囲の制止を振り切るような熱い恋ではないです。
他人(ごろうさん)のアシストにより、動き出した関係でした。